Galaxy S26 UltraのAPVコーデックとは?韓国発の動画技術を日本目線で解説

レビュー

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みなさん、こんにちは。

この記事では、2026年3月に発売された「Galaxy S26 Ultra」に初搭載された「APVコーデック」について、韓国のサムスン公式ニュースルームの記事をもとにご紹介します。「コーデックって何?」という方にもわかるように、技術的な背景から日本での実用性まで、エンジニア目線でひもといていきます。


韓国現地の情報

Samsung Newsroom KRが2026年4月9日に公開したインタビュー記事によると、サムスン電子のMX事業部 Visual Solution チームが開発した「APV(Advanced Professional Video)コーデック」が、Galaxy S26 Ultraに世界で初めて搭載されたとのことです。

記事タイトルを直訳すると「撮影を超えて編集まで——APVコーデックが完成させたモバイル映像体験、Galaxy S26 Ultra開発の舞台裏」となっており、単なる新機能紹介にとどまらず、開発チームのこだわりと苦労が語られた読みごたえのある内容でした。

APVコーデックの主な特徴

同ニュースルームによると、APVコーデックは以下の特徴を持つとされています。

項目 内容
規格 IETF(国際インターネット標準化機構)に公式登録済み
設計思想 撮影だけでなく「編集」に最適化
画質レベル 視覚的無損失(Visually Lossless)相当
色精度 YUV 4:2:2に対応
容量効率 類似コーデック比で同画質条件において10%以上削減
撮影時データ量 UHD 30fps時、約6GB/分
公開形態 オープンソースとして公開

「視覚的無損失」というのは、完全な無損失(ロスレス)とは異なりますが、人間の目で見てほぼ区別できないレベルの画質を保つということを指します。さらに、YUV 4:2:2というのは色情報の解像度が高いフォーマットで、映像制作の現場では標準的に使われる規格です。スマートフォンでこのレベルの収録ができるというのは、確かに注目に値します。

開発の舞台裏——6GB/分という壁

記事の中で特に印象的だったのが、開発チームが直面したデータ量の問題です。UHD 30fps撮影時に1分あたり約6GBというデータ量は、スマートフォンの内部ストレージへの書き込みだけでは対応が難しいレベルです。

この課題に対し、Samsung Newsroom KRの報道によると、サムスンのメモリ事業部と連携して「Samsungポータブルエスエスディー(SSD)」との組み合わせを前提にした検証を実施。解像度別に9サイクル以上の転送安定性テストを行ったと伝えられています。また、撮影中の発熱制御やシステム全体の最適化にも相当な工数をかけたとのこと。

エコシステム構築も視野に

APVコーデックはオープンソースとして公開されており、チップセットメーカーや動画編集ツール・再生プレイヤーの開発パートナーとも連携が進んでいるとのことです。将来的には映画制作の現場での活用も視野に入れ、さらなる高度化を進める方針だと報じられています。


日本現地からの評価

正直に言うと、このAPVコーデックの話を読んで「これはスマートフォンの動画撮影の考え方が変わるかもしれない」と感じました。ただ、同時に「日本で使うとどうなんだろう」という視点でも考えてみました。

エンジニア視点:コーデックの設計思想がおもしろい

私はふだん画像処理を専門にしているので、コーデックの設計思想には興味があります。一般的なスマートフォンの動画コーデックは「いかに圧縮して容量を小さくするか」が優先されます。一方でAPVは「いかに編集しやすい状態で残すか」を優先している点が、発想の転換として面白い。

H.264やH.265(HEVC)といった従来の映像コーデックは、フレーム間の差分だけを記録する「フレーム間圧縮」を使うため、後から1フレームだけ切り出してカラーグレーディングしたり、細かい編集をかけようとすると劣化が出やすい。APVがどこまでその課題を解決しているか、技術仕様書をきちんと読んでみたいと思っています。

YUV 4:2:2対応の意味——映像制作者には刺さる

色解像度をあらわす「YUV 4:2:0」と「YUV 4:2:2」の違いは、簡単にいうと色の細かさです。一般的なスマートフォン動画はほぼ4:2:0ですが、4:2:2に対応することでカラーグレーディング(色の後処理)時の耐性が上がります。映像制作・YouTubeの本格的なVlog撮影・ブライダル映像など、後処理を前提とした撮影をしている方には実際に選択肢として見えてくるスペックです。

日本で使う場合の現実的な問題

気になるのは、UHD 30fpsで1分6GBというデータ量の扱いです。256GBのストレージに保存しようとすると約42分で満タンになる計算です。記事でも触れられていたように、Samsungのポータブル外付けSSDとの組み合わせが現実的な運用になりそうですが、「スマートフォンだけで完結させたい」という日本のユーザーにとっては、少しハードルが高いかもしれません。

また、APVコーデックで撮影したファイルを編集するためには、対応した編集ソフトが必要です。現時点でDaVinci ResolveやAdobe Premiere Proといった主要ツールがどこまで対応しているかは、引き続きウォッチが必要だと思っています。オープンソースとして公開されているのは、こうした普及の課題を意識してのことでしょう。

「スマートフォンで映画を撮る」時代への布石

サムスンが映画制作の現場での活用を視野に入れているという点は、単なるマーケティング文句ではないと私は見ています。IETFに正式登録された規格であること、オープンソースで公開していること、チップセットメーカーと連携していること——これらを組み合わせると、業界標準を取りに行く戦略が透けて見えます。Apple ProResが映像制作者の間で一定の地位を確立したように、APVがAndroid陣営の”制作者向けコーデック”になれるかが今後の注目点です。


まとめ

Galaxy S26 UltraのAPVコーデックは、単なる「高画質動画が撮れる機能」ではなく、「編集を前提とした映像収録」という新しいスマートフォン映像の方向性を示すものです。

  • IETFに登録された国際標準規格
  • YUV 4:2:2対応で編集耐性が高い
  • 類似コーデック比で10%以上の容量削減
  • オープンソースで業界標準を狙う戦略

映像制作を趣味・仕事にしている方、特にカラーグレーディングや後処理に力を入れている方には、実際の対応ソフトウェアの動向とあわせて引き続き注目する価値がある技術だと思います。


参照情報源

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東京外国語大学 朝鮮語専攻卒。韓国語歴26年、ダナワ・퀘이사존・인벤など韓国テックメディアを日常的に読んで一次情報を収集。株式会社スワローインキュベート代表。AIエンジニアとして顔認証・なりすまし判定システムをC++/Pythonで開発。趣味は自作PCで、複数台を一から組み上げた経験を持ち、社内稼働中のデスクトップはすべて自作。Samsung・LG・Galaxyなど韓国テック製品を、現地の声・エンジニアの目線・自作PCユーザーの実感で深掘りします。

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