Galaxy Buds4 Pro 通話品質レビュー|AI×骨伝導で声が変わる

イヤホン

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みなさん、こんにちは。スワローインキュベート代表の大野寿和です。

Galaxy Buds4 Proの通話品質は、ワイヤレスイヤホン市場で現時点においてトップクラスの技術水準に達しています。

今回はSamsung Newsroom韓国版(원문 한국어)に掲載された公式技術情報をもとに、Galaxy Buds4 Proが「どのような仕組みで声を届けているのか」をエンジニア目線で深掘りしていきます。スペックシートには載らない”中身の話”です。


Galaxy Buds4 Proが解決しようとしている課題

ワイヤレスイヤホンで通話するとき、こんな経験ありませんか?

  • カフェで通話したら「聞こえにくい」と言われた
  • 風が強い屋外で電話したら相手に声が届かなかった
  • 電車内でハンズフリー通話をしたら周囲の音が盛大に入ってしまった

これは「マイクの数を増やすだけでは解決しない」問題です。マイクをいくら積んでも、それをどう処理するかのアルゴリズムが伴わなければ意味がない。Galaxy Buds4 Proが取り組んだのはまさにここで、ハードウェアとAIの両面から根本的にアプローチしています。


3センサー統合:環境認識型センサーフュージョン技術の仕組み

マイク・VPU・加速度センサーを組み合わせる

Galaxy Buds4 Proに搭載されているのは、「環境認識型センサーフュージョン技術」と呼ばれる独自の音声収音システムです。具体的には以下の3つの入力ソースを統合処理します。

センサー 取得するデータ 役割
3基のマイク 口から空気を伝わる音声(気導音) 通常の発話音を収音
VPU(Voice Pickup Unit)骨伝導センサー 体内を伝わる音声(骨導音) 外部ノイズに埋もれない自分の声を抽出
加速度センサー 発話時の頭部・顎の振動 「今しゃべっている」かどうかを検知

エンジニア目線で見ると、この構成は非常に理にかなっています。気導音(空気伝導)は周囲の騒音に汚染されやすいですが、骨導音は体内を通るため外部ノイズの影響をほとんど受けません。2つの経路から同一の発話を別々に拾い、差分・相関処理によってユーザーの純粋な声を再構成するというアーキテクチャです。

さらに加速度センサーで「頭部振動≒発話タイミング」を検知することで、「今まさに話しているのか沈黙しているのか」を正確に判断し、不要なノイズ処理を抑制するウェイクゲート的な役割を果たしています。


AIが脳の構造から学んだ:深層ニューラルネットワーク(DNN)ノイズ低減

「人間の脳構造から着想を得た」とはどういうことか

Samsungが公式に「人間の脳構造から着想を得た」と表現しているDNNノイズ低減アルゴリズム。少し大げさに聞こえるかもしれませんが、これは実際に神経科学的な知見が活用されています。

人間の聴覚野は、「カクテルパーティ効果」と呼ばれる選択的注意機能を持っています。つまり、騒がしい場所でも聞きたい声だけに集中できる能力です。AIがこれを模倣するためのアーキテクチャが、階層的な特徴抽出を行うDNNです。低レイヤーで音声の基本的な周波数特性を学習し、高レイヤーで「それが人の声かどうか」という意味的な判断を行うという多段処理の構造は、確かに視覚野・聴覚野の階層処理モデルとの類似性があります。

小型筐体へのオンデバイス最適化:数字で見る圧縮技術

ここが個人的に「よくここまでやったな」と思う部分です。

最適化指標 改善内容
演算負荷(Computational Cost) 従来比 約10% に削減
AIモデルサイズ 従来比 約30% に圧縮
音声ディテール捕捉能力 前モデル比 16倍 に向上

演算負荷を90%削減しながら性能を上げる、というのは普通は相反するトレードオフです。これを同時に達成しているのは、モデルの蒸留(Knowledge Distillation)や量子化(Quantization) といった技術的アプローチが組み合わされているからと考えられます。大きなモデルで学習した知識を小型モデルに”圧縮転写”することで、軽量かつ高精度なオンデバイス推論を実現する手法です。

イヤホンという極小筐体の中でリアルタイムAI処理をするためには、こうした最適化は不可欠。スマートフォンにオフロードして処理すればよいのでは?という考え方もありますが、通信遅延が発生するためリアルタイム通話には不向きです。オンデバイスで完結させることで遅延ゼロの自然な通話体験を実現しています。


スーパーワイドバンド(SWB)対応:16kHzが意味すること

通話音質の帯域幅について、少し補足しておきます。

通話規格 周波数帯域 音質の印象
従来の音声通話(ナローバンド) 300Hz〜3.4kHz こもった感じ・聞き取りにくい
HDボイス(ワイドバンド) 50Hz〜7kHz 自然に近い音質
スーパーワイドバンド(SWB) 50Hz〜16kHz ほぼ肉声に近いクリアさ

Galaxy Buds4 ProはGalaxyスマートフォンとの組み合わせで最大16kHz帯域のSWB通話に対応します。一般的な会話音声の重要な周波数成分は概ね3〜4kHz程度に収まりますが、高音域・子音・語尾の微細な発音はそれより上の帯域に多く含まれます。「さ行」「は行」の子音がはっきり聞こえるかどうかは、まさにこの帯域の差です。

特に日本語は子音の明瞭度が意味の伝達に直結する言語なので、SWB対応の恩恵は日本語通話においても大きいと言えます。「さしすせそ」「かきくけこ」の聞き分けがクリアになるというのは、実用的にかなりのアドバンテージです。


検証プロセス:風洞実験から現場テストまで

Samsungが公開した検証プロセスも興味深いものです。

ラボ環境での検証では大型風洞装置を使用し、強風下での通話品質を定量的に評価。風切り音はランダムノイズと異なる周波数特性を持つため、専用の評価環境が必要になります。

現場テスト(Field Test)では以下のような実使用環境でのテストを繰り返し実施したとされています:

  • カフェ(BGM+会話騒音)
  • 百貨店(館内放送+多人数の会話)
  • 駅(構内アナウンス+列車音)
  • 車内(走行音+エアコン音)

ラボと現場を両立させた検証体制は、プロダクト品質への真摯な姿勢を示しています。現実の雑音環境は非常に多様であり、ラボだけで最適化したモデルはしばしば現場で性能が落ちる「ドメインシフト問題」が発生します。現場データを継続的にフィードバックする開発体制がとられていることが、このアプローチから読み取れます。

この通話品質技術の進化を踏まえると、音質面での進化と合わせて総合的に評価したい方は、Galaxy Buds4 Pro レビュー|ノイキャン・音質を徹底解説【2026年】もあわせてご覧ください。


Galaxy Buds4 Pro 通話品質スペックまとめ

項目 仕様・特徴
マイク構成 3基のマイク + 骨伝導VPU + 加速度センサー
AIエンジン DNN(深層ニューラルネットワーク)オンデバイス処理
演算負荷削減 従来比 約10%
モデルサイズ圧縮 従来比 約30%
音声ディテール捕捉 前モデル比 16倍
最大通話帯域 16kHz(SWB)※Galaxy端末との組み合わせ時
検証環境 風洞実験室 + カフェ・百貨店・駅・車内での現場テスト

まとめ:Galaxy Buds4 Proの通話品質は「技術の積み重ね」で出来ている

Galaxy Buds4 Proの通話品質は、ガジェットレビューでよく言われる「クリアで聞こえやすい」という表現の裏に、かなり重厚な技術スタックが積み上がっています。

骨伝導センサーによるノイズに強い発声検知、DNN by オンデバイス推論による高精度ノイズ除去、SWBによる広帯域音声伝送という3つの柱が組み合わさることで、前モデル比16倍という音声ディテール捕捉性能を実現しています。

「ノイズキャンセリング性能はよく聞くけど、通話で自分の声がどう届くかはあまり語られない」というのがイヤホン選びのあるあるだと思いますが、Galaxy Buds4 Proはまさにそこに真剣に取り組んだ製品だと感じます。

在宅ワークでのWeb会議が当たり前になった今、通話品質はイヤホン選びの最重要基準のひとつになりつつあります。Galaxyスマートフォンユーザーであれば、SWB通話の恩恵も最大限享受できるので、特におすすめできる組み合わせです。



参考情報

本記事は以下の情報を参考に執筆しました。

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東京外国語大学 朝鮮語専攻卒。韓国語歴26年、ダナワ・퀘이사존・인벤など韓国テックメディアを日常的に読んで一次情報を収集。株式会社スワローインキュベート代表。AIエンジニアとして顔認証・なりすまし判定システムをC++/Pythonで開発。趣味は自作PCで、複数台を一から組み上げた経験を持ち、社内稼働中のデスクトップはすべて自作。Samsung・LG・Galaxyなど韓国テック製品を、現地の声・エンジニアの目線・自作PCユーザーの実感で深掘りします。

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